学びのつぼ

プログラミング教育

物事 順序立てて考える 

 来年度から小学校で必修化されるプログラミング。街中で子ども向けの専門教室が一気に増えていることにお気付きでしょうか。しかし、このプログラミング教育とは一体何なのか。まだ一般的な認知度は低く、現状でははっきり分からない方が大半だと思います。
 社会は今、IT全盛の現代から、AI(人工知能)が隆盛の近未来に向かっています。そんな中で、子どもたちが活躍するためには、デジタル機器をさらに巧みに扱う力や、それらを開発し、進化させる力が求められます。
 教育現場ではプログラミング言語ではなく、専用のコンピューターソフトを動かして、描画やロボット操作を学びます。プログラミングの基本は、与えられた任務に導く設計書をいかに正しく書けるか。その中で、物事を順序立てて考えていく論理的な思考力が鍛えられるのです。優れた学習法として人気があるのもうなずけますが、なぜ小学校での必修化なのでしょうか。
 想像してみてください。もし、タブレット端末やスマートフォンを自由に使えるとしたら、多くの子どもは時間を忘れて夢中で遊んでしまうでしょう。小学校で導入されるプログラミング活動は、そうした最新の遊びの要素を備えており、おそらくその効果に大きな期待を寄せているはずです。
 確かに、楽しさと学びを結び付ける狙いは十分に理解できます。しかし、ただでさえ授業時間が過密になっている今、来年度から高学年で正式な教科となる英語も加わり、プログラミングが「勉強」となったとしたら。逆に苦手意識を持つ子どもを生むのではないかという懸念もあります。
 さらには、実際に指導に携わる学校の先生にも、経験が少なく、大きな負担感や不安が広がっている、という評論も見掛けます。
 このように、小学校でのプログラミング教育には、大きな可能性と同時に未知数な面もあります。「読み書きそろばん」という昔からの言葉にもあるように、小学校教育では国語と算数を軸とした基礎学力が何よりも優先されます。
 その中で、プログラミングをいかに教育現場に取り込むか。そして、子どもたちの好奇心を引き出し、論理的な思考力の獲得に結び付けるか。新しい挑戦であることは間違いないでしょう。保護者は、その成り行きをじっと見守る必要がありそうです。

2019.8.5朝刊掲載

(転載に関しては中国新聞社の許諾を得ています)

 

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